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特定非営利活動法人 青少年育成支援フォーラム(JIYD)

居場所交流全国フォーラム2004

居場所スタッフの育成における「ふりかえり」の意味と活かし方とは

■事業趣旨:「スタッフの育成」をテーマに経験共有

子ども・若者を対象とした活動には、民間が中心となっている活動(個人、NPO等の取り組み)から、行政が施策として実施しているもの(児童館、青少年施設等)まで、全国各地に様々な取り組みがあります。

昨年のフォーラムに引き続き、今回も「子ども・若者の居場所」を軸として、「居場所」の現場に仕事として係わるスタッフが他の様々な活動との出会いを通じ、互いに学びあい、経験の共有をする機会づくりをめざしました。

今年は特にテーマを定め、「スタッフの育成」としました。小規模な組織が多い「居場所」の活動では「研修・人材養成」という取り組みが難しい上、「こういう時はこうする」というマニュアル化が適さない仕事内容のため、人材育成はほとんどの場合、現場での実践(OJT)を通して行われています。そこで欠かせないのが「ふりかえり」という作業です。いつ、誰と、どのようにふりかえるのか。自らのなかにどのように意味をみつけ、それを他のスタッフと共有していけるのか。スタッフの力量形成に繋がる「ふりかえり」のあり方について探ることとしました。

■実施内容と成果:専門性としての「ふりかえり」

「ふりかえることができないやつは子どもと係わる資格がない」――。

15年前に先輩に言われたこんな言葉が今でも時々よみがえり、ふりかえる覚悟をすることが居場所スタッフに求められる専門性であり仕事なのではないかと思えている、という参加者の声がありました。これは、居場所という活動で子ども達と日常的かつ継続的に接する中で、子どもから言葉として受け取るもの以外に、表情や仕草、立ち居振る舞い、あるいはその雰囲気ということまで感じながら子どもと係わりをもっていく、「居場所」という活動の特質なのかもしれません。

たとえば、その場にいるスタッフの主観と感じ方によって、「どうしたの?」とスタッフの側から子ども達に具体的にたずねることもあれば、問いかけは「心の中で」行い、実際には見守るだけという係わり方をすることもあるそうです。つまり、スタッフのとる行動は彼ら個々人の主観によるいわば「仮説」に基づくことになり、だからこそ自分がとった係わり方がその子にとってよかったのだろうかを、常にふりかえることが非常に重要な過程となります。

参加者の属する「居場所」活動は規模も内容も実にさまざまで、日々の活動の記録や、スタッフ間での「ふりかえり」についても、相当の多様性がありました。1日の活動が終わると、スタッフ間で今日の出来事、気になった子どもの様子等をとにかく「語る・話す」派がいれば、スタッフ全員が自分一人で記録を「書く」派もあり、そのスタイルは交代制の日誌であったり、個々人の日誌であったりしました。総じて言えることは、語る・話すことも大事だけれど、それを文字に残して記録することが求められるということでした。

「ふりかえり」がスタッフ個人、そして活動全体の成長のために不可欠な作業であるという事実を改めて認識し共有した2日間のセッションでした。

「居場所」活動では、日々多くの子どもと向き合い、話し合い、共に時間を過ごしているスタッフの方々が直面している迷いや戸惑いがあるそうです。それは経験の多少ではなく、真摯に一人ひとりの子どもと向き合おうとする想いからのものであり、知れば知るほど敬意を覚えずにはいられません。


「ふりかえり」の意味と活かし方について多様な意見が交わされた。

■記録や「ふりかえり」は何のため?

記録や「ふりかえり」は、「子どものために」と思いがちで、さらにスタッフが追い込まれると「自分のため」になってしまうことがあるとの指摘がありました。子ども達はスタッフを見極めており、したがってそのスタッフの力量を超えた子どもは実は現れることはなく、スタッフが本気で踏ん張った時初めて、共に乗り越えられるかどうかというような子どもが現れるのだそうです。その時にその子と向き合う覚悟が持てるかが大事であり、「ふりかえり」の作業や記録は「子どものため」でも「自分のため」でもなく、「子ども“との”ため」にあるものではないかという指摘です。

■開催概要:

この事業は、ルーセント・テクノロジー財団の助成をいただき、実施しました。